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告知と放談の部屋☆ 放94「武蔵野次郎氏激賞」 [趣味・カルチャー]

   

「宇宙皇子」の映画化ということのキャンペーンが盛んにおこなわれ始めている最中のことです。注目はその内容について読者の話題を集めている最中でしたが、そんな最中に「野性時代」での私の成人向けの作品の作業は粛々と進行していました。


 会社の状態は兎に角「宇宙皇子」と「ファブスター物語」の同時封切りということで、そのキャンペーンが盛んに行われていまして、そのための素材の仕方についての相談があれば、言うまでもなく協力していました。その間にも脚本家たちからもたらされる制作現場の様々な問題については、あまり予算をかけないで製作するという方針もあって、私としても一部内容の撮り直しをお願いしたこと以外は、もうこれ以上はお願いできないという気持になっていましたので、多少の不満は我慢するしかないということを伝えて頑張って貰うしかありませんでした。


 映画の完成まではもうほとんどかかわることもないことから、私は挑戦し始めた成人物作品の二巻目の執筆に没頭していました。一巻目の「御霊狩り」は宇宙皇子の読者とは違った人々の間で注目を浴び始めていましたが、世間的にはほとんど騒がれることはありません。勿論、これまで成人物の作品の読者は、恐らく「宇宙皇子」の影響もあってあまり興味を持たなかったかも知れません。しかし若手編集者たちが工夫して私をアピールするための特集をしてくれましたので、取り敢えずこれまでとは違った読者の開拓ということでは大いに役立ったのではないかと思っていました。これで若年層の読者とはまた違った読者にも、様々な素材を発表できることになりそうだなと思っていたところ、二巻目である「野盗狩り」の発表を前に、大変なニュースが飛び込んできたのです。


 産経新聞の文芸欄にベテラ評論家である武蔵野次郎氏が、拙作「御霊狩り」について激賞してきたというのです。早速新聞を読ませて頂きましたが、作家として物語を書く者はこうでなくてはならないという熱烈な一文でした。「野性時代」の編集部では直ちに第二巻目である「野盗狩り」の発売に当って、その一文を転載させて頂くことになったのです。


                                                 「野性・篁・変成秘抄2」1.jpg


             「野性特集 5」1.jpg 「篁2・野盗狩り」1.jpg


  若手編集者たちはその反響の大きさに感動して大騒ぎでしたが、私はあくまでも成人向きの小説は書けないのではないかという偏見を、一掃する切っ掛けになるのではないかと、氏の一文は私にとって大変な激励文だと思って感謝の手紙を書いたのを思い出します。


 ところがこの頃から編集部内には二つの微妙な空気が生まれてしまったようです。言うまでもなく社長からはこれで大きな賞も狙えるという雰囲気になりましたが、一方の副社長は、目下進めている映画の公開で大きなヒットを考えている最中です。


 勿論このあたりの様子については、現在だから冷静に判断できるのであって、当時は兎に角社内には微妙な空気が漂ったことだけが感じられただけで、自体が様々に動くのに翻弄されるばかりでした。副社長から映画の新しいキャンペン用というポスターが完成したので、是非お会いしたいというお誘いがあったのです。しかも今回は家内も一緒にということで、赤坂の料亭で会いましょうというのです。評論家としても名の知れた方の大変高い評価をして頂いた評論が発表された直後のことです。私は大変気分よく出かけました。


 当初は公開を間近にした映画の二メーターもある新しいポスターなど、新しいキャンペン用の素材を紹介して頂き、是非映画の成功が実現できますようにという、大変嬉しい意気込みを聞かせて頂き、間もなくお食事が用意されて雑談をたのしみました。


 ところがその後で、私にとってはあまりにも意外なお願いが始まったのです。


 改めて私と家内を前に副社長は丁重に申し出たのです。


 「先生。お願いですから、賞狙いだけはしないで頂きたいのです」


 私はあまりにも突然の発言でしたので、一瞬呆然としてしまいました。


 何と答えればいいのか、返答に窮してしまいましたが、これまでも○○賞が欲しくて書いてきた作品はまったくないのです。恐らく今回の武蔵野次郎さんの激賞する作品のことを言っていらっしゃるのでしょう。しかし私自身は、かつて書いた「天之稚日子」「幻想皇帝」そして今回の「篁・変成秘抄」にしても、〇〇賞を狙いたいという思いで書いたものではないのです。


 「私は正直に、ああした作品を書くのは、あくまでも若年読者だけでなく、成人読者に向けた作品も書きたいという気持から、書かせて頂いただけで、決して〇〇賞が欲しくて書いたものではありません。しかし今回のことをきっかけにして、時にはそういった作品も書くことがあるかもしれません。これは作家としてはどうしようもない性の様な気がするのです。基本的にはこれまで通りに娯楽作品を書きつづけるつもりですが、どうか時にはそんな作品を書くかもしれません。その時はどうかお許し下さい」


 私は妙に堅苦しくなってお答えしたのでした。


 「よく判りました。どうかこれまで通り、よろしくお願いいたします。実はこれまでに例がありまして、人気作家が賞を狙って書き始めるとたちまち売れない作家になってしまうことが多いのです」


 副社長も本音と思われることを、堅苦しい口調で訴えてこられたのでした。


 利に徹する人として当然のことかもしれませんが、私は作家として書きたいという自然な発想だけは譲れないことだけは伝えたはずです。それからは間もなく帰宅となったのですが、どうやらその日の重要な要件出会ったはずの映画のキャンペンということよりも、実はあの「篁・変成秘抄・御霊狩り」の出来栄えに関して、私が本格的に〇〇賞を狙い始めるのではないかと考えられた副社長は、「宇宙皇子」のような売れる作品を書かなくなるのではないかと心配になった結果、釘を刺すのが目的であったように思えます。映画の制作は大詰めになりましたが、それでも「篁・成秘抄」も「幻術師刈り」「風流狩り」「熟寝狩り」とい若手編集者たちはその反響の大きさに感動して大騒ぎでしたが、私はあくまでも成人向きの小説は書けないのではないかという偏見を、一掃する切っ掛けになるのではないかと、氏の一文は私にとって大変な激励文だと思って感謝の手紙を書いたのを思い出します。


 ところがこの頃から編集部内には二つの微妙な空気が生まれてしまったようです。言うまでもなく社長からはこれで大きな賞も狙えるという雰囲気になりましたが、一方の副社長は、目下進めている映画の公開で大きなヒットを考えている最中です。


 勿論このあたりの様子については、現在だから冷静に判断できるのであって、当時は兎に角社内には微妙な空気が漂ったことだけが感じられただけで、自体が様々に動くのに翻弄されるばかりでした。副社長から映画の新しいキャンペン用というポスターが完成したので、是非お会いしたいというお誘いがあったのです。しかも今回は家内も一緒にということで、赤坂の料亭で会いましょうというのです。評論家としても名の知れた方の大変高い評価をして頂いた評論が発表された直後のことです。私は大変気分よく出かけました。


 当初は公開を間近にした映画の二メーターもある新しいポスターなど、新しいキャンペン用の素材を紹介して頂き、是非映画の成功が実現できますようにという、大変嬉しい意気込みを聞かせて頂き、間もなくお食事が用意されて雑談をたのしみました。


 ところがその後で、私にとってはあまりにも意外なお願いが始まったのです。


 改めて私と家内を前に副社長は丁重に申し出たのです。


 「先生。お願いですから、賞狙いだけはしないで頂きたいのです」


 私はあまりにも突然の発言でしたので、一瞬呆然としてしまいました。


 何と答えればいいのか、返答に窮してしまいましたが、これまでも○○賞が欲しくて書いてきた作品はまったくないのです。恐らく今回の武蔵野次郎さんの激賞する作品のことを言っていらっしゃるのでしょう。しかし私自身は、かつて書いた「天之稚日子」「幻想皇帝」そして今回の「篁・変成秘抄」にしても、〇〇賞を狙いたいという思いで書いたものではないのです。


 「私は正直に、ああした作品を書くのは、あくまでも若年読者だけでなく、成人読者に向けた作品も書きたいという気持から、書かせて頂いただけで、決して〇〇賞が欲しくて書いたものではありません。しかし今回のことをきっかけにして、時にはそういった作品も書くことがあるかもしれません。これは作家としてはどうしようもない性の様な気がするのです。基本的にはこれまで通りに娯楽作品を書きつづけるつもりですが、どうか時にはそんな作品を書くかもしれません。その時はどうかお許し下さい」


 私は妙に堅苦しくなってお答えしたのでした。


 「よく判りました。どうかこれまで通り、よろしくお願いいたします。実はこれまでに例がありまして、人気作家が賞を狙って書き始めるとたちまち売れない作家になってしまうことが多いのです」


 副社長も本音と思われることを、堅苦しい口調で訴えてこられたのでした。


 利に徹する人として当然のことかもしれませんが、私は作家として書きたいという自然な発想だけは譲れないことだけは伝えたはずです。それからは間もなく帰宅となったのですが、どうやらその日の重要な要件出会ったはずの映画のキャンペンということよりも、実はあの「篁・変成秘抄・御霊狩り」の出来栄えに関して、私が本格的に〇〇賞を狙い始めるのではないかと考えられた副社長は、「宇宙皇子」のような売れる作品を書かなくなるのではないかと心配になった結果、釘を刺すのが目的であったように思えます。映画の制作は大詰めになりましたが、それでも「篁・成秘抄」も「幻術師刈り」「風流狩り」「熟寝狩り」という五巻は確実に書ききったのでした。う五巻は確実に書ききったのでした。


              「篁3・幻術師狩り」1.jpg 「篁4・風流狩り」1.jpg 「篁5・塾寝狩り」1.jpg


  実はこの後で武蔵野次郎氏から、私にとって人生の内でも衝撃となるような知らせが飛び込んでくるのですが、私が求めた理想の世界にもどろどろとしたものが支配していることを知ることになったのでした。その真相については、私の胸の内にだけ仕舞っておこうと決めました。あの「篁・変成秘抄」を発想した時の純粋な思いだけは、終生大事にしたいと思っているのです。大変入手が困難になってしまっているかも知れませんが、機会がありましたら、是非、「御霊狩り」「野盗狩り」でもお読み頂きたいと思います。


 今回は私が「荒野独行」を決意した始まりのお話になってしまいました。


 


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