「白塗りに理由(わけ)あり


 


昨今は2017年時代に始まった伝統的で支配的な文化に対する抵抗として起こった、ピーコック時代から今日まで男性も大変身だしなみに気を遣うようになってきました。


 今回はその問題については、直接的にはあまり関係がありませんが、それにつて、つい思い出してしまうことがありましたので、平安王朝時代の、公家たちの化粧のことについてお話したいと思います。


 薄暗い光の中でも美しく見えるようにという工夫から、白塗りにしていた女性の場合は別として、ほとんどの男性たちが白塗りというのは、どういうことなのでしょうか。


我が国における、男性のピーコック時代の始まりだったのではないのかと考えてしまうのですが、実はこれには深い理由が秘められていたのです。


 平安時代の貴族は、湯につかるという習慣がなく、時折サウナ風な蒸気へ当たるだけだったのです。当然ですが不潔なために皮膚病が多かったということが言われています。そして更に、伝染病の一種である痘痕(とうそう)が流行っていて、それが治る時にはアバタが顔面に残ってしまったというのです。それを隠すために白塗りが行われたという現実的な説があります。


現代の俳優さんが、女性であることを表現するために行う白塗りともまったく違った、ごく日常的な問題だったのです。つまりおしゃれとは全く無縁な、現実的な事情によるものだったのでした。


 私には当時の食糧事情による影響ではないかと思うことが多いのですが、兎に角現代とは比較にならないほど貧しく、限られた食糧事情のためであったとしか思えませんでした。


調味料といえば塩、酢、(びしお)しかなくて、甘味はありませんでしたから、まさに味気がない食事でした。食べる時にそれらの調味料を使うしかない上に、塩蔵と乾物の魚で蛋白質、ビタミンAを取るだけで、運動不足です


しかも近親結婚のために体質が低下していたので、消化吸収が悪くて栄養失調が少なくなかったのではないかと思われるのです。死因に結核や脚気が多かったということを読んだことがあったのですが、その上に体臭があり、それを消すために香が焚かれていたのです。しかし食糧事情がよくなくて、栄養状態が保てないということを考えると精神的にも健康が保てなくなり、極楽往生に憧れて、現世を否定する生き方になりがちです。


更に冬の夜は寒いし照明が暗いので、ものの()を見てしまうということも起こりがちになってしまいます。


今日の話題である公家の白塗りという状況も、現代の男性のお洒感覚とはまったく違う切羽詰まった日常生活に原因があるということが判って、かなり同情したくなってしまいます。


今考えるとお気の毒としか思えません。