「板についた」


 今回は板についたとは言っても、蒲鉾のことではありません。


 さまざまな仕事の世界でよく使われることばですが、特に演劇の世界ではよく耳にする言葉です。


 その世界に入って、長年研鑽を積んだ結果、1人前になったねという褒め言葉としてよく使われます。


「あいつもようやく板についたようだね」


 つい蒲鉾を連想してしまいがちですが、本来はこの場合に使われているのは「舞台」のことです。


 それを演劇の世界では舞台を「板」という慣例があることから、若手の俳優などが長年の修行の甲斐があって、演題の中でもいい役を無難にこなす様子を見て、「あいつもすっかりいたにちったね」などといって、芝居の中で違和感がなく演じられている姿を見た人がいう言葉です。


 それに対して「いや私はまだまだ蒲鉾役者ですよ」などと謙遜した言葉を受かったりするものから、青野とは蒲鉾から出た言葉と勘違いする人がおいのだと思います。


 これはやがて一般的な日常の中でも使われるようになって、結婚したばかりで手伝いにでた奥さんも、当座は物慣れなくて魚屋の雰囲気にはなっていなかったのだが、数年もするとすっかり威勢のいい魚屋の奥さんとして働いている)姿を見て、


 「あそこの魚屋の女将もすっかりいたについたね」


 お得意さんたちからそんな言葉が飛び出すほどになったりします。


そうだ国会でも何度も大臣の経験を積んでいくうちには、


「最近は質問されても、すっかり答弁も板についてきたね」


などといわれるような人もいますね。